*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和3年12月23日(木)第651号*****

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公的価格評価検討委・中間整理「人への分配は『コスト』ではなく未来への『投資』だ」
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岸田首相へ中間報告手交 岸田文雄首相の発案で設置された、介護職員等の処遇を「抜本的に見直す」ための有識者会議・公的価格評価検討委員会(座長・増田寛也=写真・左から2番目)が12月21日「中間整理」を取りまとめ、翌日の12月22日に首相官邸で、岸田首相(=写真・右から2番目)に手交した=写真は首相官邸HPより

 「中間整理」では、政府が介護職員等を対象に、収入を3%程度(月額9千円)引き上げるための措置を、補正予算を財源として来年2月から実施することに対して「一定の評価ができるもの」と指摘した。

 加えて「一日も早く、現場で働く方々に着実に行き渡るよう必要な対応を進めることを求めるとともに、今回の措置が介護報酬等の制度に反映され、確実な賃上げにつながる仕組みとすべきであり、一時的なものにとどまらないことを求める」等と要請した。

 【介護職員等への処遇改善「人への分配は『コスト』ではなく、未来への『投資』だ」】

 また、今回の介護職員等に対する処遇改善が「人への分配は『コスト』ではなく、未来への『投資』だ」「処遇改善の最終的な目標は、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されていること」等と指摘した。

 その一方で、今後も継続的に介護職員の処遇改善を実施していくための「財源」についての詳細な言及はなかった。同委員会は、今回の「中間整理」を踏まえて「来夏までに方向性を整理する」と、来年夏までに「結論」を出すことを予告した。

 今回の「中間整理」の要点は、次の通り。

 【補正予算を財源とした、今回の政府の措置について】

 政府は、補正予算で介護職員等を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を3%程度(月額9千円)引き上げるための措置を、令和4年2月から実施することとした。

 この際、他の職員の処遇改善に、この処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることとしている。本委員会としては、今回の措置は「速やかな処遇改善」の観点から、一定の評価ができるものと考えている。

 一日も早く、現場で働く方々に着実に行き渡るよう、必要な対応を進めることを求めるとともに、今回の措置が介護報酬等の制度に反映され、確実な賃上げにつながる仕組みとすべきであり、これらが一時的なものにとどまらないことを求める。

 【今後の処遇改善について】

 「新しい資本主義」において、人への分配は「コスト」ではなく、未来への「投資」である。官と民が共に役割を果たすことで、成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで、次の成長につなげる。

 これこそが、持続可能な経済、そして、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」を実現するための要である。

 【処遇改善の方向性について】

 今般の経済対策の措置を前提としても、介護職員等の賃金は全産業平均から乖離(かいり)があり、仕事の内容に比しても未だ低く抑えられている状況である。引き続き人手不足の解消等に向けての対策が必要だ。

 今回の措置の結果も踏まえつつ、さらなる処遇の改善に取り組むべきである。処遇改善の最終的な目標は、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されていることである。

 また介護・障がい福祉、保育、幼児教育分野も含め、経験・技術に応じた処遇ルールの明確化(賃金体系の整備)やタスクシフト・タスクシェアによる業務の高度化・効率化、各職種の養成課程のあり方、職員配置も含めた勤務環境の改善についても検討すべきだ。

 こうした処遇改善を行うに当たっては、全てを国民の負担に回すのではなく、既存予算の見直しや高齢化に伴って増加する医療・介護費の中での分配のあり方などを含め、幅広く検討を行うべきである。

 従来は、主に財政措置等を財源として処遇改善を進めてきた。今後は、さらなる財政措置を講じる前に、医療や介護、保育・幼児教育などの分野において、国民の保険料や税金が効率的に使用されることが重要だ。

 一部の職種や事業者だけでなく、現場で働く方々に広く行き渡るようになっているか、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上が必要だ。またデジタルやICT技術、ロボットの活用により、現場で働く方々の負担軽減と業務の効率化を進めていくことも必要。

 本委員会は、こうした処遇改善に向けた政策手法を実現する観点から、それぞれの分野における費用の見える化やデジタル等の活用に向けた課題等について検討し、来夏までに方向性を整理することとする。

◇─[後記]───────────

 「中間整理」で述べられていることは、至極真っ当な意見だと思いますが「処遇改善の最終的な目標は、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がること」と指摘しているにも関わらず、その財源についての詳細な言及がない点は、残念です。

 「来夏までに方向性を整理する」と予告した「結論」ではぜひ、最も重要な「財源の確保」について、正面から「提言」してもらいたいと思います。

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