*「最適な介護」を実現するための情報紙*
_/_/_/_/_/日本介護新聞ビジネス版_/_/_/_/
*****令和3年9月8日(水)第580号*****

◆◇◆◆◆─────────────
アルツハイマー新薬アデュカヌマブ・専門家「今後、認知症医療と介護の変革期に突入」
─────────────◆◇◇◆◆

 認知症の原因で、全体の6~7割を占めるといわれるアルツハイマー病で、その治療薬としてアメリカの食品医薬品局(FDA)は6月7日に「新薬の『アデュカヌマブ』の製造・販売の承認を、条件付きで決めた」と発表し、日本でも承認に向けた準備が進んでいる。

 これに対し、田村憲久厚生労働大臣は6月8日の記者会見で「画期的な方向の治療薬だ」と期待感示した(=弊紙6月9日号で既報)が、認知症専門医も「日本で介護保険制度が始まって以来の、認知症医療・介護の変革期に、これから数年で突入する」と評価した。

アデュカヌマブの高評価 9月7日に、日本老年精神医学会(池田学理事長=大阪大学大学院教授)が開催したプレスセミナーで、池田理事長が述べた=画像・セミナーで使用した資料より。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工。アデュカヌマブを高く評価する一方で、今後の課題=高額な治療費・安全性の担保・治療の場へのアクセス等=も指摘した。

 また「これらの全ての問題の背景には『専門医や医療機関の充実と、地域偏在の解消』が大前提になっている」等と言及した。池田理事長の講演で、アデュカヌマブに関して述べた内容は、次の通り。

 【アデュカヌマブの登場で「これから数年は、認知症医療・介護の変革期に突入する」】

 アデュカヌマブは今年6月、FDA(米国食品医薬品局)で初めて承認された、アルツハイマー病に対する疾患修飾薬(疾患の進行そのものに働きかけができる薬)だ。既存の抗認知症薬(認知症に対して医学的に効果があると証明されている薬)とどこが違うのか?

 そもそも疾患修飾薬というのは、認知症の進行そのものを止めることができるし、また進行の速度をかなり落とすことができる。これに対し既存の抗認知症薬は、神経機能を補う効果があるもので、一時的に進行を遅らせることができる。

 その後、一定期間が過ぎるとまた同じように認知症が進んでいく。一方この疾患修飾薬の開発は、非常に難航した。この20年間で治験(「薬の候補」を健康な成人や患者に使用して、効果や安全性などを確認する目的で行われる臨床試験)に進めた薬は150あった。

 しかし、ことごとく失敗した。米国で初めて抗認知症が承認されたのが1996年で、最後の薬の承認が2003年くらいだった。この頃から抗認知症役は、全く出来ていない。その後の2006年頃からの失敗の山が、ほとんど疾患修飾薬の開発だった。

 この期間は、製薬会社にとっても臨床医にとっても、苦しい時代だった。この間も、認知症の患者さんたちはもちろん、ご家族も含め、認知症の疾患修飾薬の開発を待ち望んでおられた。

 そしてようやく、この薬(アデュカヌマブ)が一剤、出来てきたわけだが、これは2000年前後に、日本で介護保険制度が始まって以来の、認知症医療や認知症介護の変革期に、これからの数年で突入する可能性があると思われる。

 【「治療を終えた後の、対処療法薬などの様々な薬の開発も活発化するだろう」】

 アデュカヌマブの(アルツハイマー病の特徴である)脳にたまった、異常たんぱく質であるアミロイドβを取り除くことは(アルツハイマー病以外の)他の認知症疾患にも応用できる。

 ルビー小体型認知症や前頭側頭型認知症でも、これとは別の異常たんぱく質が溜まっていることがわかっているが、これらを同じメカニズムで取り除くことができれば、様々な疾患の治療に応用することができる。

 ▼ただし、これらの薬を永続的に使うことはできないので、これらの治療を終えた後に、対処療法薬が必要になってくるので、様々な薬の開発が活発化してくるだろうと思われる。それから無症状の時期に、わずかな認知機能の低下の時期に、超早期診断が必要になる。

 この時に、様々なバイオマーカー(病状の変化や治療の効果の指標となるもの)も開発されてくるだろうと思う。ただ、この無症状の時期に本人に(認知症であることを)告知するという、非常にデリケートな問題をはらんできて専門医の技術が求められてくる。

 【今後の様々な課題も──高額な治療費・安全性の担保・治療の場へのアクセス等】

 また、課題も出てくる。まず、高額な治療費がかかる。これまでの治療費とは全く違う額の治療費となるので、どこまでこの薬を使うのか、どういう対象に使うのかということが、非常に重要になってくる。

 それから現在は、バイオマーカーも非常に高額だ。こういうものに代わるものの開発が、世界中で進んでいる。それから、アデュカヌマブは脳から異常なたんぱく質を取り除く治療法なので、安全性の担保が非常に重要になる。

 例えば同様の薬では、投与を始めてから1年くらいのうちに、脳の浮腫(ふしゅ=むくみ)が起こりやすいことが明らかになっているので、かなり頻繁にMRI(強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する)検査が必要になる。

 そしてもう一つは、患者さんやご家族にとって重要な「治療の場」へのアクセスの問題。1ヶ月に1度、30分程度の点滴ができるクリニックや総合病院は、全国的にかなり少ない。これらの「治療の場」の整備も、喫緊の課題だ。

 これらの全ての問題の背景には「専門医や医療機関の充実と、地域偏在の解消」が大前提になっている。

◇─[後記]───────────

 アデュカヌマブが実際に日本国内で広く利用されるためには、超えなければならない「高いハードル」がいくつもありそうです。それでも、田村大臣も「画期的な方向の治療薬」と高く評価しているのですから、ぜひ広く利用されるよう検討してもらいたいものです。

────────────────◇

 ◆日本介護新聞「ビジネス版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆Twitter=https://twitter.com/Nippon_Kaigo
 ◆Facebook=https://www.facebook.com/nipponkaigo/

(C)2021 日本介護新聞