*「最適な介護」を実現するための情報紙*
_/_/_/_/_/日本介護新聞ビジネス版_/_/_/_/
*****令和2年12月18日(金)第407号*****

◆◇◆◆◆─────────────
介護報酬改定・厚労省案をおおむね了承、ただしICT機器導入で複数の「懸念」示される
─────────────◆◇◇◆◆

 来年4月の介護報酬改定が大詰めを迎え、厚生労働省は12月18日に開催した介護給付費分科会で、これまで議論してきた内容の「審議報告(案)」の「最終案」を提示し、委員からおおむね了承を得た。これで報酬改定をめぐる議論は、実質的に「終了」した。

 今後、最終的な調整が行われた上で、厚労省がホームページ上で「審議報告」を公表する。今回の報酬改定では昨日、改定率が「プラス0・7%」と決定(=昨日付けの弊紙で既報)したが、これを踏まえた実際の介護報酬の「点数付け」は、年明けに公表される予定。

 【「ICT機器の導入」で、賛成意見が多数の中で複数の「懸念」も出される】

テクノロジーの活用 今回の報酬改定では、議論の大きな柱として「介護人材の確保・介護現場の革新」が据えられ、その具体的な内容の一つに「テクノロジーの活用により、介護サービスの質の向上及び業務効率化を推進していく」方向性が示された=画像・厚労省HPより。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工

 具体的には、見守り機器の100%の導入やインカム等の使用、安全体制の確保や職員の負担軽減等を要件に「特養(従来型)の夜間配置基準を緩和する」こと等が挙げられ、これらも結果的にはおおむね了承されたものの、複数の委員から「懸念」も示された。

 この議論に関する、委員から出された代表的な「賛成」と「懸念」の意見は、次の通り。

 ◆【賛成】=「ICT機器の導入は今、着手しなければならない重要課題だ」

 ◆「テクノロジーの活用や、人員基準・運営基準の緩和を通じた業務の効率化・負担軽減の推進は、安全・安心が第一だ。私たち施設経営者も、利用者や家族とていねいに相談しながら取り組んでいくが、これが担保されなければ実行はしない。

 ◆ICTの導入時には、様々な業務の見直しとマネジメントが必要であり、的確に使いこなせば、介護職員の業務負担の軽減にも資する。厚労省の調査でも、記録・文書作成・連絡調整等の作業負荷が5%程度効率化され、休憩時間も若干多くなっている。

 ◆さらに、サービス利用者に直接的に関わる時間も1・2倍程度、充実している。見守りセンサーを利用すれば、夜間の職員の巡回も減るため、睡眠の質も向上するという結果も出ている。これらをみてもICT機器の導入は今、着手しなければならない重要課題だ。

 ◇【懸念】=「現場にとって有用なICT機器は『インカム』くらいしかない」

 ◇テクノロジーの活用は、大変重要な課題だと認識しているが、残念ながら現状では、現場にとって有用なICT機器・ロボットは「インカム」くらいしかない。有用なものがないにも関わらず、実証データを収集しても仕方ないのではないか。

 ◇センサーマットも重要だが、これは以前から使用されているものだ。今後、産業界には現場のニーズを深く読み取りぜひ、現場に有用なICT・ロボットの開発に努めて頂きたい。さらに有用なものについては、基金を通じて強力な資金援助が必要だ。

 ■【懸念】=「逆に、職員の負担増になるのではないか?」

 ■働く者の立場から「新技術の導入」に反対している訳ではないと主張してきたことを、理解して頂きたい。新技術の導入にはこれまでも「賛成」してきたが、導入により「逆に、職員にとって負担増になるのではないか」とも指摘してきた。

 ■(これに対して厚労省は)「負担増にはならない」と回答しているが(この回答だけでは)「担保にはならない」ということを、これまでも繰り返し主張してきたつもりだ。また、その効果についても「エビデンスが十分ではない」とも申し上げてきた。

 □【懸念】=「ICT機器の利用目的で『人員削減』が先行しすぎていないか?」

 □私たちサービス利用者の立場からも、介護現場にテクノロジーが導入されることに「反対」している訳ではない。それらの機器の使用により、職員の皆さんが希望を持って働けるなら、また家族が安心できる使い方がなされるなら、それで良い。

 □ただ、今回の議論は「人員削減」が中心になっていた。「これだけのテクノロジーを使えば、これだけ現場の人員が削減できます」という考え方が先行しているので、心配になってしまう。なぜ、そのテクノロジー機器を導入するのか、キチンと説明して欲しい。

◇─[後記]───────────

 「立場の違い」により、意見が分かれることは良くありますが、弊紙が今回取り上げたICT機器の導入については「同じ立場」(=施設系)で「賛成」と「懸念」の意見が明確に分かれています。厚労省は今後も、このICT機器の導入は「推進していく」立場です。

 施設系の事業者からは「ICT機器を導入しても、その効果が不明確だ」との指摘をよく聞きますが、どうやら問題はそう単純でもなさそうです。今後、今回の報酬改定を踏まえた検証で、この「懸念」に対してわかりやすく説明することが、厚労省には求められます。

────────────────◇

 ◆日本介護新聞「ビジネ版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆Twitter=https://twitter.com/Nippon_Kaigo
 ◆Facebook=https://www.facebook.com/nipponkaigo/

(C)2020 日本介護新聞