*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和2年12月16日(水)第405号*****

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新型コロナの感染拡大で「介護従事者の方々のメンタルヘルス対策が重要」
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 新型コロナの「第3波」が全国に及んでいる中で、日本老年精神医学会(理事長=池田学・大阪大学大学院精神医学分野教授)は12月16日、WEBで新型コロナに対する学会の対応等を説明したプレスセミナーを開催した。

池田学・日本老年精神医学会理事長 この中で池田理事長=写真・WEBでの会見より=は、新型コロナの影響を調査するために、会員に対して実施したアンケート等の結果から、介護施設や病院での感染対策で「面会制限」等により、大きな悪影響が出ていること等を報告した。

 さらに「第3波」の渦中にある全国の介護施設に対して「介護従事者や家族の方々のメンタルヘルス」を懸念事項として挙げた。そして「この対策は、当学会の大きな役割だと認識している。ぜひ私たち専門医に声をかけて頂きたい」等と呼び掛けた。

 セミナーの最後の質疑応答で池田理事長が、日本介護新聞からの質問に答える形で述べた。弊紙と池田理事長との、質疑応答の概要は次の通り。

 □質問1・本紙=理事長は(セミナーの中で)高齢者施設での感染対策の課題として「施設等における集団感染発生への備えの不足」を挙げられたが、どのような点で「備えの不足」があるのか?

 ■回答1・理事長=懸念していることが2点ある。1点目は、施設内で(感染者と非感染者とのエリア分け等の)感染対策が十分ではないことだ。これは、ある意味で仕方がないことだと思う。

 ■そもそも、病院ですら十分な対応が出来ていなかった。これまで、インフルエンザやノロウイルスの感染対策では、介護施設もキチンと対応されていたと思う。しかし介護施設の性格上、必ずしも医師や看護師の医療関係者が常駐しているところばかりではない。

 ■この部分をキチンと手当していかなくてはならない。ここが不足していると(エリア分け等の)感染症対策が十分に行われない事態に至る。もう1点は、われわれの専門である老年精神医学の観点から見た場合の、介護施設における認知症の方々への対応だ。

 ■例えば、各施設で行っている「面会制限」だ。それまでは定期的に家族と面会が出来ていたのが、新型コロナの影響で会えなくなり、入居者の皆さんが「うつ」「不安」「BPSDの悪化」等の事例が増加したことが、アンケート結果からも明らかになった。

 ■残念ながら、私が勤務している大阪大学病院精神科でも一時期、面会を禁止した。さらに大阪は、皆さんがご存じのような状態(看護師不足による自衛隊への派遣要請)になっている。

 ■こうなると真っ先に、認知症の方々の精神状況が悪化する。この対策が必要だ。例えばタブレットを利用して、施設利用者とその家族が互いに顔の見える環境をつくって「面談」をしている施設も多くある。

 ■私の阪大病院でも、入院されている方とご家族がガラス越しに向き合い、顔を見ながらスマホ等で音声をやり取りする等、様々な工夫を試みている。この辺りの利便性を向上させるための技術開発も、必要だと思う。

 □質問2・本紙=現在、介護施設ではクラスターが日本全国で発生している。特に「第3波」の真っただ中にある状況で、介護施設でのクラスターを防ぐために、日本老年精神医学会の理事長として、介護従事者や施設管理者に対してメッセージがあればお願いしたい。

 ■回答2・理事長=ぜひ、私たちの学会の会員とともに、この「難局」に立ち向かって頂きたい。私たちは精神科医だが、周りには感染症の専門医もいるので、何らかの形でご相談を頂ければ、その方面の専門家に(感染対応を)つなぐことが出来る。

 ■もう一つ、私たちが支援できるのは介護従事者の方々のメンタルヘルスだ。これは非常に重要だ。専門職に加え、ご家族のメンタルヘルスを守っていかなくてはならない。これが当学会の大きな役割だと認識しており、ぜひ私たち専門医に声をかけて頂きたい。

◇─[後記]───────────

 あるテレビの報道番組で、医療関係者が「これまでは『使命感』だけで新型コロナに向き合ってきたが、もう限界が来ている」と、記者の取材に回答していました。介護従事者の皆さんも、全く同じ状況だと思います。

 過酷な労働環境に従事する方々には「報酬」で報いることは必要ですが「メンタルヘルス」を指摘した点は、さすが専門学会のトップだと感じました。「報酬」に加え介護従事者の「メンタルヘルス」にも対応する制度を、国には早急に構築してもらいたいと願います。

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