*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和2年7月21日(火)第308号*****

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通所系の「実質的な報酬アップ」特例措置、家族の会が「撤回」求める
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 通所系サービス事業所で「提供した時間の区分に対応した、報酬区分の2区分上位の報酬区分算定を可能とする」等と、厚労省が6月1日に通達した「実質的な報酬アップ」特例措置に、公益社団法人認知症の人と家族の会(以下「家族の会」)が「撤回」を求めている。

家族の会・動画 6月29日に「家族の会」の鈴木森夫代表理事が、加藤勝信厚労大臣に「新型コロナウイルス感染症に係る介護報酬の特例措置によるサービス利用者への負担押し付けの撤回を求める緊急要請」を提出した=家族の会では「緊急要請」の内容をYoutubeで解説した。画像はその冒頭画面

 「緊急要請」では「この(特例)通知の取り扱いをめぐり、利用者や介護の現場から戸惑いや怒りの声が多く上がっている」と指摘し、具体的には家族の会の電話相談に「3時間しか利用していないのに、5時間の利用料を払わなければならないのは納得できない」

 「利用者・家族は事業所の大変さを理解し、利用時間を減らして協力している上に、さらに利用料の負担増まで強いられるのはおかしい」「このような理不尽がまかり通れば、利用者・家族の生活は立ち行かなくなってしまう」等の「怒りの声」が届いているという。

 「家族の会」は、厚労省の各種の有識者会議にも委員を出しているが、6月25日に開催された介護給付費分科会では、鎌田松代理事が「コロナ禍で大変な中、利用者の安全や健康を守るためにがんばって事業継続して頂いている事業所には、感謝の気持ちでいっぱいだ」

 「しかし、だからといって利用者にその感謝の代償として、実際には利用していないサービスの分まで負担しろというのは、あまりにも理不尽だ。また、それ(=特例措置の実施)によって限度額を超えてしまえば、その分は全額自己負担となってしまう」

 「到底、道理に合わないやり方で、同意した利用者だけが負担増となり、同意しない人との不公平が生じる」と、事務局(=厚労省)に問い正した。これを踏まえて「緊急要請」では「事業者が閉鎖に追い込まれるような『介護崩壊』が起こらないことを願っている」

 「今回、介護事業所が運営上大きな困難に直面せざるを得なかったのは、ひとえに新型コロナウイルス感染症の蔓延によるものであり、事業所の責任でも、利用者・家族の責任でもない」

 「不可抗力による事態を、利用者に負担を押し付けて解消しようとするような今回の措置は、利用者と事業者の信頼関係を壊すだけでなく、介護保険制度への国民の信頼を揺るがし、国の責任を放棄するものと言わざるを得ない」

 「このような先例を絶対に作ってはならない。直ちに、今回の特例措置(臨時的取り扱い)を撤回し、介護事業所の減収や感染対策にかかる経費等についてこそ、補正予算の予備費を使い、公費で補填するよう、強く求める」等と述べている。

◇─[後記]───────────

 この特例措置の詳細について厚労省は、6月15日にQ&Aを通達し「サービス提供前の同意でなくても、給付費請求前までの同意で可能」「必ずしも書面(署名捺印)による同意確認を得る必要はない」等の考え方を示しています。

 この問題は、弊紙「ビジネス版」6月17日号でも取り上げましたが、その際はこの「後記」で「『不慮のトラブル』を回避するためにも最低限、利用者も負担増になる点を文書で説明しておいた方が得策」と指摘しました。

 しかし、介護保険の利用者が多く参加する団体から強い反対意見が出ており、さらに「撤回」まで求める「緊急要請」が出された以上、特例措置を受ける介護事業者側も「自粛」せざるを得ない状況に追い込まれているのが「実情」でしょう。

 6月15日に通達したQ&Aの内容を見ても、厚労省は介護現場の「実情」を読み誤っている感を受けます。これ以上、介護現場との「温度差」を広げないためにもやはり、この特例措置は一度「撤回」をし、代替案を再考した方が「得策」と思われます。

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