*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和2年6月19日(金)第288号*****

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東京都・豊島区「選択的介護」特区申請まで踏み込まない見込み
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 豊島区が主体となり、東京都とともに事業化を進めてきた「選択的介護モデル事業」が、介護保険サービスと保険外サービスを「同時・一体的に提供する」事業にまでは踏み込まない見込みになった。これにより、東京都が国家戦略特区に申請する可能性も低くなった。

豊島区混合介護第5回会合 「選択的介護モデル事業」は、豊島区が事務局となり2017(平成29年)年6月に「有識者会議」を立ち上げた=写真は、平成30年5月16日に開催された「有識者会議」第5回会合。その後、現行の介護保険制度の枠内で実施可能な、従来の介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせた事業から開始した。

 当初は、介護保険サービスと保険外サービスを「同時・一体的に提供」する、いわゆる「混合介護」の実施も検討事項に掲げられていたため、「有識者会議」がスタートした当時は、一般マスコミを中心に「豊島区で混合介護を実施」との報道が相次いだ。

 「混合介護」を実施するためには国家戦略特区を申請し、政府から特区として指定を受ける必要がある。特区の申請は都道府県等で行うため、豊島区は「東京特区推進共同事務局」とも連携し、東京都は申請する時に備えて「選択的介護」をエントリーしていた。

 ◆来年3月に「モデル」が終了し、4月から「本格的事業」へ

 当初の計画では「モデル事業」は、平成30年4月から開始して2年間実施する「平成30年度モデル」と、平成31年(令和元年)4月から開始して、同様に2年間実施する「平成31年度モデル」(後に「令和元年度モデル」に名称変更)の2本の事業が予定されていた。

 現在実施されている「平成30年度モデル」と「令和元年度モデル」は、ともに現行の介護保険の制度内で実施可能なサービスを提供している。この「モデル事業」は当初から「3年間」の予定で、来年(令和3年)3月には終了する予定。

 来年4月以降は、名称から「モデル」が外れて「選択的介護」として、本格的な事業として実施されることになる。今年6月10日に実施された「有識者会議」の第10回会合では、2本の「モデル事業」の今後の進行予定が示された。

 「平成30年度モデル」は、今年7月に「中間報告」が公表される。「令和元年度モデル」は、今年10月に「報告書」の作成作業に入る。このため2本の「モデル事業」ともに、現在は実質的に「まとめの作業」に入っている。

 理屈上は来年3月末まで、「同時・一体的なサービス提供」を新たに模索することも可能だが、特区の申請にかかる時間を考慮すると、実現は極めて難しい。「有識者会議」は来年3月の「報告書」の公表まで、あと2回の開催を予定している。

 しかし、仮にこれから「同時・一体的なサービス提供」を実施しようとすれば、「有識者会議」にかけて詳細を検討・検証するための時間が足りない。今回の「有識者会議」では、2本の「モデル事業」のこれまでの進捗状況を踏まえた課題を整理した。

 ここでは「一層の利用拡大に向けて、提供事業所の拡大、事業者・ケアマネジャー・利用者それぞれへの、さらなる理解促進が必要」な点が挙げられている。このため東京都・豊島区ともに、今後は「選択的介護」の周知・広報に活動の力点が置かれる模様だ。

 ◆行政とケアマネが関与した「新たな事業モデル」を確立・普及へ

 そもそも「選択的介護」は、介護保険サービスと保険外サービスを、より「柔軟な組み合わせ」による提供形態を検討し、高齢者・家族のニーズへの対応と、事業者の運営効率向上を目指すことが目的だった。

 現行の制度でも、保険の「内」と「外」を明確に区分すれば組み合わせて提供することは可能だが「選択的介護」は、現行の制度内で実施する点は同じだが、サービスの計画や実施に、行政(豊島区)とケアマネジャーが関与する点が、最大の特長となっている。

 豊島区では「『平成30年度モデル』は、平成30年8月に最初のサービス利用者があり、以後は増加を続けて今年4月には38人に至った。『令和元年度モデル』の利用者は現在7人。課題はあるものの、着実に成果は出ている」と、高く評価している。

 また東京都も「モデル事業」の成果を評価した上で「豊島区以外の都内の区市町村へ、報告書を配布して『モデル事業』で得られた成果を広く紹介し、他地域への普及を図りたい」等と、今後の抱負を述べている。

◇─[後記]───────────

 結果論になってしまいますが「選択的介護モデル事業」は、マスコミが注目した「混合介護の実施」とは異なる結果となりそうです。ただし重要なのは、サービス利用者にとって「使い勝手の良いサービス」なのかどうかです。

 その意味では「選択的介護」の真価が問われるのは、来年4月以降の「本格的事業の実施」からだと思います。弊紙では近々、この「選択的介護モデル事業」の現状を、本紙「エンドユーザー版」で取り上げる予定です。

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