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*****令和元年10月29日(火)第129号*****

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生協「10の基本ケア」、重度化防止の効果を実証
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 生協の全国組織である、日本生活協同組合連合会(本部:東京都渋谷区、以下「生協連」)は、傘下の奈良県の生協が母体となった施設で2006年から実践してきた介護サービスを、2016年から「生協10の基本ケア(以下「基本ケア」)として全国展開している。

生協会見 この「基本ケア」の効果について生協連は10月29日、都内で記者会見し=写真=「介護サービスの質評価で実績のある研究者が多面的に検証し、生協の『基本ケア』が心身機能悪化の重度化予防に効果があることを実証した」と発表した。

 「基本ケア」の内容と概略は、次の通り。

 1、換気をする=病気予防の基本として、換気を行う。
 2、床に足をつけて座る=「日常生活がリハビリ」という考えのもと、足を使って立ち上がる習慣を身につける中で、トイレや食事など「自分でできること」を増やす。
 3、トイレに座る=トイレでの排泄は「人間が守るべき尊厳の基本」と考える。
 4、あたたかい食事をする=自身で調理したり盛りつけたり、親しい 方と楽しく食べることで社会性を保つ。
 5、家庭浴に入る=生活リハビリの効果を生かして家庭浴への入浴を大切にする。
 6、座って会話をする=安心感を与えられるように座って会話をする。
 7、町内におでかけをする=慣れ親しんだ地域に出かけることで、社会性や精神的な豊かさを保ち、これまでの生活リズムを維持できるようにする。
 8、夢中になれることをする=自分らしく、好きなことに夢中になれる機会や、居場所づくりに取り組む。
 9、ケア会議をする=自分の街で住み続けられるように、社会性と暮らしを守るケアプランをつくる。
 10、ターミナルケアをする=元気な時から人生の最期まで、地域との連携で自宅でのターミナルケアをサポートする。

 評価委員会の委員長を務めた、国立長寿医療研究センターの近藤克則部長(千葉大学教授=写真左から2番目)は、現在厚労省が取り組んでいる「科学的介護」を取り上げ「あれはデータベースの作成だが『どういうケアのパッケージがいいのか』という視点はない」

 「今回はこの10のケアの組み合わせが良い、という検証仮説があり、それが本当に良いかどうかを検証した。リハビリ専門医師、ケアワーカーの経験を持つ研究者、データベースを利用して他施設で研究をしている方々、長期ケア看護の専門家で委員会を構成した」

 「大きな特長は『基本ケア』を実施している施設と実施していない施設を比較したことだ。第三者がそこに入って訪問調査をしている。まだ3ヶ月間追跡調査してその前後の効果を比較している」等と、公正な評価を行い重度化防止の効果が実証できたことを指摘した。

 さらに「10項目のうち、2・3・5・6・7・8は座位を保持する、または移動するために立つ、という動作を数十回繰り返す要素が入っている。それぞれの1回の行為はたいしたことのない動作かも知れないが『ちりも積もれば』明らかな効果が出てくる」と指摘した。

 なお同調査は、平成30年度の厚労省の老人保健健康増進等事業として補助金を受け「在宅生活を支える重度化予防のためのケアとその効果についての既存指標を用いた調査研究」報告書(全235ページ http://clk.nxlk.jp/EghxLDEn )として公表されている。

◇─[後記]───────────

 この「基本ケア」は昨年5月にマスコミ向けに公表されましたが、送られてきたニュースリリースを最初に見た時の率直な感想は「介護の世界では特別なことではなく、当たり前のことではないか?」と、その効果に疑問を持ったことでした。

 しかし今回は、その効果が科学的に実証されました。特に委員長を務められた近藤教授は、専門の老年医学分野だけでなく、介護業界でも極めて著名な研究者です。この「基本ケア」の効果については、さらに追って取材を継続していきたいと考えています。

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