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*****令和元年9月11日(水)第99号*****

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「75歳以上の高齢者には、栄養サポートが重要」
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 「日本の75歳以上の高齢者は、ほとんどが『やせすぎ』で、サルコペニア(筋肉量が減少して筋力低下や身体機能低下をきたした状態)になる可能性が高く、特に低栄養で入院した際は死亡率が圧倒的に高くなる」と、高齢者に対する栄養サポートの重要性を説いた。

 藤田医科大学医学部の東口高志教授=写真=が指摘した。世界最大の食品メーカーであるネスレの日本法人で、コーヒーの販売が主力のネスレ日本が9月11日、都内で開催したセミナーで東口教授が「高齢者における低栄養の危険性とフレイルの対策」と題して講演した。

東口先生 東口教授は、BMI【体重と身長の関係から算出されるヒトの肥満度を表す体格指数で、体重kg÷(身長m×身長m)で算出する】について「これまで日本では22が標準とされてきたが、近年は世界的な統計が『27が平均』と指摘している」と紹介した。

 また「この統計によると18・5未満は非常に死亡率が高くなり、日本人の高齢者のほとんどはこの範囲に入る。また別の統計で、18・5未満の入院患者の割合を調査したところ、欧米では全患者数の5%だったのに対し、アジアは15~30%だった」

 「また、高齢者(平均75歳)が救急入院した後の死亡率を、主にたんぱくエネルギーの栄養障害が有るか無いかで比較した統計では『有る』の方がはるかに死亡率が高くなる。これらのことからも、高齢者に対する栄養サポートは非常に重要だ」と、警鐘を鳴らした。

 その対策として東口教授は「十分なたんぱく質を摂取し、栄養に配慮した食事を取り、トレーニングを継続して、まずは『低栄養』を防ぐこと」と指摘した。特に食事面で「毎日、朝・昼・夜の三度の食事をキチンと取ることが重要だ」

 「ただし高齢者は若い時と比べて、特にたんぱく質を多く摂取することが必要となる。一度の食事でこれが難しい時は、サプリメントを投与して補っても良い」等と述べた。また「私は、高齢になっても元気で生活できる社会を『栄養』でつくりたいと考えている」

 「そのため日本を発祥とした『社会栄養学』を誕生させた。ここで栄養管理体制の構築と、食を通して『皆でみんなを支え合う』システムづくりに取り組んでいる。そこで賛同者とともに街頭に出て高齢者に『元気に食べていますか?』と、声掛け運動を実践している」

 「この活動は医療・看護・薬剤等の方々にも参加をして頂き一般社団法人WAVES Japanとして活動している」と紹介した。講演終了後、日本介護新聞は東口教授に、日本人が「やせすぎ」の原因と、外出しない高齢者への対応を質問した。質疑応答の内容は次の通り。

 □本紙=日本人の高齢者のほとんどはBМIが「18・5」と、世界の標準の「27」よりかなり低いが、原因は何か? 人種的な要素もあるのか?

 ■東口=世界では「高齢者」は、病院等で長期療養をされている方が該当する。本日の講演で示したデータも「ベッドの上にいる人」になる。これに、人種的な問題も加わる。ドイツ人・メキシコ人・日本人の脂肪と筋肉の割合を比較したデータがある。

 これによると、日本人は圧倒的に体重が少なく、脂肪も筋肉も少ない。メキシコ人は西洋人と同じく体重はあるが、筋肉は日本人より少ない。だから人種による違いがあることも事実だ。日本人も含めたアジア人の最大の「欠点」は小さいことだ。

 ただし、今後は変化するだろう。日本の歴史をみても、日本人の身長と体重が最も小さかったのは明治時代だ。縄文時代はもっとしっかりした体だった。当時は狩猟民族だったからだ。ところが明治時代に貧困等の社会状況で身長の伸びが止まり、体重も少なくなった。

 このため、在宅で通常からよく外出している高齢者も含めれば違った結果になるだろうが、世界と比較した場合に日本人が「やせすぎ」で、低栄養に陥る危険性が高いことには変わりはない。

 □本紙=高齢者の中には、特に男性で外出を嫌がる傾向がある、との研究結果があった。WAVESの活動は街頭での声掛けだが、そもそも外出したがらない高齢者については、どのようにアプローチするのか?

 ■東口=その点には、明確なエビデンスがある。これは世界中で一緒。男性は筋肉量が多いので、一気にサルコペニアになる。女性はもともとの筋肉量が少ないので、ほんの少ししかならない。男性は、20代・30代でついた筋肉があるが、これが弱ると心も弱る。

 気持ちが暗くなると、外に出なくなる傾向がある。実はWAVESの活動でも声掛けをする対象は圧倒的に女性が多い。だから女性には「男性の話し相手になって下さい」と言っている。冗談のように聞こえるかも知れないが、これは日本だけでなく世界共通の「悩み」だ。

◇─[後記]───────────

 厚労省も近年、高齢者の「低栄養」対策にはかなり本格的に取り組んでいます。この問題の担当官と以前に話したことがあるのですが、バランス良く栄養を摂取することは当然として、その担当官は「共食」の重要性を指摘しました。

 「低栄養」対策には、様々なアプローチの手法があると思います。東口教授のWAVESの活動や「共食」の取り組みなど、今後も弊紙では様々な手法の「低栄養」対策を取り上げていきたいと思います。

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