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*****令和元年8月26日(月)第87号*****

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「もう、拘牢省(こうろうしょう)とは言わせない」
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 「厚生労働省が価値を提供すべき、すべての国民と、未来の厚生労働省の若手職員のために」──厚労省は8月26日、省内の「若手チーム」が「厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言」をまとめ、根本匠厚労大臣に手渡した。

 提言の内容は、まず厚労省の業務・組織を取り巻く現状を確認し、その改革に必要な視点を述べた上で、改善案を提示している。具体的には「圧倒的な人員不足」「縦割り型の職種別人事による組織ガバナンス機能の低さ」「組織全体としてのマネジメント意識の低さ」

 「伝統的キャリア像の固定化」「組織全体としての人材育成意識の低さ」「劣悪なオフィス環境」といった厚労省が抱える課題を挙げ、「個人のモチベーションや組織のパフォーマンスを下げ、労働環境を一層悪化させている」と指摘している=図、提言資料より

厚労省の現状 具体的な改革案として、例えば「コールセンター改革」では、まず問題点として「厚労省への外部電話は、ひと月当たり10万件超える一方で、コールセンターの対応者は4人のみ。約9割の電話に、若手職員をはじめとする職員が応答している」

 「その中には、苦情電話を含む電話に1日平均30分以上応答している若手職員が47%。電話対応に忙殺され、定時内には通常業務ができない。『電話対応』が長時間労働の原因の一つになり、国民の皆様一人一人に、十分な電話対応ができていない可能性がある」。
 
 これを改革するため「一般的なご意見の窓口を一本化し、電話を受けてから切るまでの応対方法を整理する。このためコールセンターの大幅増員が必要。お電話いただいた方の満足度を高め、若手もデスクワークに専念できる環境づくりにつながる」等と提言している。

 「若手チーム」は今年4月25日、厚労省の若手職員が省内の業務・組織の在り方や、中長期的な社会経済の変化を見据えた厚生労働行政の方向性について、自主的・主体的に、自由な発想で議論し、厚労省の改革につなげていくために発足した。

 20・30代を中心とする38名の職員をメンバーとし、 厚労省に18ある全ての職種(人事区分)から構成されている。事務次官から入省間もない若手まで含め、243名へヒアリング・対話を行った。

 またアンケートも実施し、厚労省本省の幹部・職員約3,800名のうち、第1回目は1,065人、第2回目は1,202人が回答した。さらに、他省庁や先進的な取組を行っている企業等を訪問し、若くして厚労省を退職した14名にもヒアリングを行った。

 提言では、「若手チーム」に届けられた、一部の職員・元職員からの声が掲載されている。同チームはこれを「改革の出発点」と位置付けている。主な「声」は、次の通り。

 ■厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったと、ずっと思っている。(大臣官房、係長級職員)

 ■家族を犠牲にすれば、仕事はできる。(社会・援護局、補佐級職員)

 ■仕事自体は興味深いものが多いと思いますが、 このような時間外・深夜労働が当たり前の職場環境では、なかなか、一生この仕事で頑張ろうと思うことはできないと思います。(労働基準局、係員)

 ■毎日いつ辞めようかと考えている。毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った。(保険局、係長級職員)

 ■残業することが美学(残業していないのは暇な人)という認識があり、定時に帰りづらい。一生懸命業務時間内に業務を行っても、出来ない人の業務を押し付けられる。(労働基準局、係員)

 ■今後、家族の中での役割や責任が増えていく中で、帰宅時間が予測できない、そもそも毎日の帰宅時間が遅い、業務量を自分でコントロールできない、将来の多忙度が予測できないという働き方は、体力や精神的にも継続することはできないと判断した。(退職者)

 ■子どもがいる女性職員が時短職員なのに、毎日残業をしていたり、深夜にテレワーク等をして苦労している姿をみて、自分は同じように働けないと思った。(退職者)

◇─[後記]───────────

 民間企業でも、「当社は社内のあらゆる制度を見直し、大改革を断行した」等という台詞は時々耳にしますが、今回の厚労省「若手チーム」のように、職員の「本音」を丹念に聞き取り、それを「公開」した例は、弊紙発行人は目にしたことがありません。

 今回の記事のタイトル=「もう、拘牢省(こうろうしょう)とは言わせない」=は、オフィス改革の項目で述べられた言葉ですが、発行人は以前、厚労省OBから「厚生労働省ではなく、強制労働省」と、その労働環境の過酷さの実情を教えてもらったことがあります。

 「提言」はこれで終わりではなく、この内容に基づき平成2年度予算で重点項目として必要な費用を要求し、平成3年度にかけて「職員を大事にする、厚生労働省に変わる」ことを目指します。国民のためにも、ぜひ改革を成就してもらいたいと弊紙では願っております。

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