*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和元年8月22日(木)第85号*****

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特定技能の「転職」に伴う様々な「制約」
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 新たな在留資格・特定技能は、技能実習制度と比較して、一定の条件は付くが「転職可能」なことが大きな特長となっている。しかし実際に「転職」しようとすると、例えば在留期間の更新時期との関係等で、様々な「制約」があることがわかった。

 日本介護新聞が、法務省に問い合わせて確認した。例えば、特定技能の介護職で、フィリピンで実施された海外試験(現時点ではフィリピンのみだが、今後数ヶ国で実施予定)に合格した「Aさん」のケースで考えてみる。

 Aさんはフィリピンでの試験に合格して特定技能1号の在留資格を得ても、まずは日本国内での勤務先が決定していないと査証(ビザ)が発行されない。その後AさんはB社に勤務先が決まって来日し、働き始めたが個人的な理由で11ヶ月目に「転職」を決意する。

 Aさんは転職活動をし個人の伝手でC社という介護事業所で「受け入れても良い」と快諾される。その際にAさんは入国する際に発行されたビザを(勤務先をB社からC社に)「書き換える」必要が生じる。しかし特定技能の制度上は、この「転職」は何ら問題がない。

 ここで問題となるのは、在留期間の「更新」だ。特定技能1号の在留期間は「上限で通算5年まで」だが、「1年,6か月又は4か月ごとの更新」という条件が課せられている。Aさんの更新が「1年」だったとすると、B社を退社する時点で「残り1ヶ月」となる。

 法務省では「その場合、在留資格の更新期限が問題となってくる。書き換えにはある程度の時間と手間を要するため、仮にAさんの転職先がC社に決まっていても、更新までの日数を勘案した結果、『書き換え申請を受け付けられない』というケースもあり得る」

 「その場合は、B社を退職した時点でビザが効力を失うため、Aさんには一度帰国して頂き、改めてC社で働くことでビザを申請し、その後に特定1号の在留資格で再来日して頂くことになる」という。このB社からC社への転職に伴う期間は「上限5年」に含まれない。

 また今後、特定技能の介護職については、日本国内で試験が実施されることも予想されるが、その際に外国人材が「日本で試験を受けたい」と希望した際は「短期滞在」で来日し、試験を受けることができる。

 ただし法務省では「個々のケースによっては『短期滞在』で認められない場合もあり得る。特定技能の在留期間とビザの『書き換え』の関係も、それに伴う『転職』可能な時期は一概に言えないので、事前に法務省の在留管理課に問い合わせて欲しい」と述べている。

◇─[後記]───────────

 今回の法務省への取材は、ある介護事業者から「特定技能は『転職可能』だと聞いたが、日本人と同様に『いつでも個人の自由』に転職できるのか?」と、問い合わせがあったことがきっかけでした。

 結論は上記の通りで、「日本人と同様ではなく、様々な『制約』が想定される」になります。特定技能はまだ制度がスタートしたばかりで今後、実際に外国人材が入国してくれば様々な「問題」の発生が想定されます。

 まずは、事前に「想定」される課題を整理し、制度の運用方法や法令の解釈を調べ、技能実習制度や他の在留資格と比較して、十分に検討を加えた上で「外国人材の採用」を決断するのが「最善の策」と言えるでしょう。

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