*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和元年8月16日(金)第81号*****

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業界団体が産学と協同で「腰痛予防」
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 介護施設の業界団体が、産学と連携して「腰痛予防」に取り組むため、傘下の会員を対象に実証試験を開始する。全国の特別養護老人ホーム等の高齢者福祉施設・事業所が加盟する、公益社団法人全国老人福祉施設協議会(老施協)が8月7日に公表した。

 老施協、神戸大学大学院保健学研究科、株式会社バックテックの3者が協力して実証試験を行う。業界では「腰痛は介護職員の離職理由のうち14・3%を占める」と言われており、その予防のため「ポケットセラピスト」というウェブアプリケーションを使用する。

 まず、登録時にいくつかの情報を入力することで、腰痛慢性化のリスクを可視化し、腰痛のタイプを判定する。この結果をもとに理学療法士等の医療専門職が、ユーザー(=介護職員)に合った腰痛対策プログラム(トレーニング等)をオーダーメイドで立案する。

 それ以降も、担当セラピストによるマンツーマンでのチャットサポート(LINEやチャット等)をいつでもどこでも受けることを可能とする。その他、腰痛や、腰痛と関連の深い活動量を可視化できる機能があり、その結果から腰痛の解決の糸口を発見する。

 すでに小規模での予備的な試験を実施しており、効果検証の結果、利用後3ヶ月時点で「ポケットセラピスト」を利用した介護職員は、何もしなかった介護職員と比較して、腰痛の程度が有意に改善していた=グラフ

老施協 また、運動療法や認知行動療法をベースとしたアプローチを採用しているため、生活習慣是正やメンタルヘルス向上の効果も期待されている。老施協では「腰痛リスクを可視化する機能も搭載しており、病院の受診の必要性が高いユーザーには、受診勧奨も可能だ」

 「このため早い段階で深刻な腰痛を防ぎ、ひいては腰痛による離職を予防することができると見込まれる。先般、傘下の会員からアプリケーション等の利用者の公募を開始した」等と述べている。

 今回、アプリの共同開発に参加した理由について老施協では「腰痛予防は介護業界の喫緊の課題のひとつで、対策として、天井走行リフトや介護ロボット等の導入を積極的に行っている施設もあるが、別途工事が必要で、運用まで時間がかかるなどの問題がある」

 「また、職員が体調不良の際に無理をすることで腰痛になる場合もあれば、介護ロボット等を活用している時に使用法を誤ると痛みが出てきてしまう事例もあった。このためウェブアプリを活用することで、新しい腰痛予防の取り組みに乗り出した」等と述べている。

◇─[後記]───────────

 業界団体は通常、官庁と折衝したり、そのための研究調査を行ったり、会員向けに様々な情報を提供することを主な事業としており、今回のように民間企業と連携して製品開発に深く関与することは「極めて異例」です。

 特別養護老人ホーム(特養)を経営するのは社会福祉法人(社福)ですが、近年は介護分野を含め、全ての社会福祉分野の経営に携わる社福の経営環境が、国の施策によって大きく変化しています。

 弊紙と懇意にしているある社福の幹部は「もう従前とは違い、社福にも民間企業と同じレベルの経営努力が求められる時代になった。国は、経営の芳しくない社福に対して『ルールを緩和しますから他の社福と合併して下さい』との施策を進めている」と指摘しています。

 そもそも業界団体は、その構成員の多くは中小規模の事業者です。単独で「経営課題」を乗り切ることが難しい局面も多々あるでしょう。今回の老施協の「腰痛予防」には、個々の会員の「現状の打開策を渇望する真剣な姿」が見えてくるような気がします。

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