*「最適な介護」を実現するための情報紙*
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*****令和元年5月29日(水)第27号*****

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「医療過疎」が進む今こそ「早期対策を」
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 地方では、経営が極端に悪化している病院が増加しているが「このまま無策で10年・20年を看過すれば、これらの病院はいずれ無くなる。そうなる前に、国が補助金を出す等の対策を講じるべきだ。今がそのターニングポイントだ」と、警鐘を鳴らした。

 日本慢性期医療協会が5月23日に開催した定例記者会見で、同協会の武久洋三会長=写真=が問題提起した。武久会長は、年々高齢者の数は増えているにも関わらず、病院の入院と外来の受診率は全体的に低下傾向にあることを、厚労省が発表した資料等を元に解説した。

 さらに各市区町村でも、病院間で病床の稼働率(在棟患者延べ数を、許可病床数×365日で割った値)に大きな格差が存在することを指摘した。一例として北海道小樽市内にある、精神病院を除いた12病院の稼働率を示した。

 ▽A病院=99・7%
 ▽B病院=96・7%
 ▽C病院=94・2%
 ▽D病院=93・6%
 ▽E病院=92・6%
 ▽F病院=92・1%
 ▼G病院=83・7%
 ▼H病院=80・9%
 ▼I病院=75・4%
 ▼J病院=70・4%
 ▼K病院=63・8%
 ▼L病院=60・4%

武久会長 武久会長は「FとGの間には10%近い差がある。このG以下は、かなり稼働率が悪いと言える。これらが10年後から20年後に存在しているかといえば、かなり厳しいだろう」と解説した。

 その上で「特に人口減少に苦しむ地方では、公立病院の存在が重要になる。『だったら、病床数を削減すれば良い』との指摘があるが、公立病院の病床数はほとんど減らないのが現状だ。これをやろうとすると、首長選挙で政治問題になりやすい、とも言われている」

 「病院の適正な経営には、病床数の削減は必要だが、公立病院の将来像が固まらなければ、他の民間病院の病床削減も足踏みする。地方は人口減少が激しく、病院のM&Aが成立せずに倒産して無くなってしまうケースが増えてきた」

 「人がいなくなれば病院も減り、医師もいなくなる。医師がいないところに人間は住めなくなる。医療過疎が起こっている自治体には、補助金を出してでも対策を講じるべきである。病院は民間といえども、国策医療により公的医療保険で運営されている」

 「社会的要因で病床を減少させる時には(存続のための経営努力をすることを前提に)一病床500万円程度の補助金を「病床の減反(床)政策」として考慮してはどうか。また、医師になって40歳までに最低2年間は、へき地勤務を義務付けるべきではないか」

 「過疎化が進む地方の住民は、都市部の住民と同じく医療保険料や介護保険料を支払っているのに、医療や介護サービスが周囲になく、利用できないことは不公平ではないか。これらは本来、地方の問題ではある」

 「しかし国は、地方であっても、医療や介護の被保険者に入院、入所や通院、訪問などのサービスを、住居の近くに適正に配置する責務があるのではないか。10年先、20年先のことだと思って無策で良いのか。もはや今がターニングポイントだ」等と問題を提起した。

 また、この問題の原因の一つとして、公立病院の「無策」を指摘した。具体的には「なぜか公立病院は、一般病床しかないところが多い。地方によっては療養病床をつくる等、努力しているところもある」

 「その反面、一般病床として80床あるのに40床も空いている、そんな無策な公立病院は結構ある。地域住民の病気の状態を、素直に反映して病床をつくれば、地域包括ケア病床とか、療養病床がもっと必要なはずだ」

 「そのようなフレキシブルな病院運営を公立がしていないのも問題だが、地方では『病院は多機能にならざるを得ない』という意識が非常に低い。この点も、公立病院には促したい」等と述べた。

 質疑応答で本紙は、「地方の医療」を考えた際に「病院を維持するよりも、補助金を出してでも在宅医に来てもらう、という手法もあるのではないか」と質問したが、武久会長は地方の医療の厳しい現状から「現実的ではない」との見解を示した。

 また会見に同席していた、同協会の池端幸彦副会長=写真=は「在宅医は重要だが、バックベッド(病床)があってこその在宅医だ」と、この問題の早期解決の重要性を補足説明した。

副会長 本紙と武久会長・池端副会長との質疑応答の内容は、次の通り。

 △本紙=会長は「補助金を出してでも地方の病院を維持すべき」と言われたが、地方の医療体制を維持するのであれば「補助金を出してでも、在宅医に来てもらう」という手法は取れないのか?

 ▲武久=まず、過疎地の診療医は高齢化している。息子を医学部に行かしても帰ってこない。人口が数千人という町村では、75歳とか80歳の医師が無理して往診に行っているが、現実には風前の灯だ。過疎地における診療所の現状は、非常に厳しいものがある。

 ▲池端=在宅医の設置は当然重要で、国も進めている。私もその検討会のワーキンググループに入って議論しているが、会長の言われた通り現状の在宅医は、まず高齢化している。息子さんも後を継がない。現状では、どの地域の在宅医も苦戦している。

 ▲池端=地域の在宅医の重要な仕事は「看取り」だが、実は自宅で看取るのは全体の2割くらいしかいない。昔は8割を自宅で看取っていたが、昔の状況に戻せるのか、というと日本の医療情勢から言えば、不可能だ。

 ▲池端=つまり、在宅を基本としながらも、ちょっと困った時には入院できるという「バックベッド」があってこその在宅医だ。「バックベッド」も無くなってしまうと、在宅医も極めて厳しい状況に陥る。結果的に、患者さんが他の場所へ移ることしか手段がなくなる。

◇─[後記]───────────

 介護の世界では「医療との連携」が重要な課題になっています。具体的には、在宅医を中心とした「地元の医師会との連携」です。このため弊紙は、医療面では「在宅医の在り方」しか注目していませんでした。

 発行人の所在地には、幸いなことにバスで数分のところに公立のM病院があり、何かあれば地元の診療所で「紹介状」を書いてもらってこの病院に行っています。しかし、もしこの病院が無くなると、市内には総合病院はなく、電車で近隣の市まで通う羽目になります。

 ちなみに、M病院のホームページで稼働率を調べたところ、ここ3年間はほぼ70%前後でした。これは武久会長が指摘する「かなり厳しい」部類に入ります。今後はまず、このM病院の「何が課題なのか」を調べて、今回の話題の「解決策」を探ってみようと思います。

 今後とも弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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